翻訳も音楽も自己実現活動~伊藤さんとの翻訳談義

先日、翻訳にご興味のある伊藤さんより、翻訳についてメールをいただきました。そのときのメール返信内容が当サイトにおいて有益になるかなと思ったので、一部転載しておきますね。(伊藤さんの許可を得ております)


福光から伊藤さんへの返信メール(その1)


福光さん、こんにちは(^0^)以前、歌詞を訳してみたい!と言っていた伊藤です☆

はい、覚えています!


あれから、何曲か訳してみました。

おー、さっそく行動に!


やっぱり、難しいなぁ。と思いましたが楽しいです。

この「楽しい」が続けるコツですね。


自分でも歌詞を作ってるみたいな感じがします(^-^)

たしかに! 歌詞翻訳では、同じ分量の英語詞と日本語詞を浴びるように見て、ひたすらマネして、歌詞ならではの言葉遣いを身につけないといけませんもんね。

漱石や鴎外の時代から村上春樹さんまで、小説家も海外作品を翻訳することで、自分の日本語を磨いています。


勝手に自分の感覚?感性?をプラスしてみたり(笑) 全く違う話にはなっていないけど、作詞家さんは、本当はどんな話を作ったのかな?って思います。

翻訳は想像して創造するもの。歌詞の訳は特にそうです。


歌詞にも文化・習慣の違いが含まれるのかなぁとか。作詞家さんの言葉や想いが直接、解かったら良いのに!

職業翻訳家は、作者が存命の場合は、実際に内容確認をしたりしますが、故人の場合や、納期に追われている場合などでは、見切り発車の訳文になります。


当たり前だけど歌詞や言葉には、単語としては表に出ていないけれど、隠されている想いや言葉がある事にも気が付きました。え~!これは一体どんな意味があるの~?? 掴めそうで、掴めないです(笑)雰囲気は解かるのに(; ̄^ ̄)

同じ日本人どうしが日本語でコミュニケーションをするときでも、このことを感じることがありますので、外国語ならなおさらですね。


やっぱり、ちゃんと正しい英語を解かっていないと、省略された言葉も何も判らないですね。日本語能力も大事だし。日本語の語彙も少ない表現も乏しい読解力も低~い自分に気が付きました。訳したくても良い言葉が見つからない。読書が必要ですよね?(笑) 翻訳家さんは、その言語のスペシャリストですね!

タネあかしをすると、両言語を知っているから訳しているというよりは、わからないことばを理解する方法を知っているのが翻訳者でしょうね。

つまり、言語と文化の知識以外に、調べるスキルが必要です。

どの職業もそうですが、トラブル解決が速く正確にこなせるかどうかが、プロとアマの差なのかなと思います。

翻訳の日々のトラブルとは:

  • 原文が何を言わんとしているかわからない
  • 言わんとしていることがわかっても、訳文で100%表現できない

ですね。


福光さんは、どんな事をしたくて翻訳家を目指されたのですか?

サラリーマン時代は健康を崩しやすかったので、よくあるパターンですが、時間と場所にとらわれない翻訳という職業に転身することを目指しました。

また、特許翻訳というジャンルに絞ったのは、稼ぎが良さそうだから、という理由からに他なりません(笑)


もともと英語への興味は、ビートルズを歌いたかったからです。それが高じて、英語の歌詞を書いて歌うという趣味に発展しました。

なので、学生の頃は、語学が得意であっても、翻訳者だけはなりたくなかったのです(^^;) オリジナルな言葉をつむぐ作業とは、正反対のように見えたから。

でも、今では、訳文だって十人十色なので、翻訳者とは、アーティストではなくても、手作り作品を生み出す職人だと思っています。


そして、今は何を目指されているのでしょうか? もし、よろしければお答えいていただけないでしょうか?

どんなに時代がかわろうが、どんな職業にころぼうが、家族のしあわせ作りと、社会への貢献というのがゴールです。

という大きな信念は置いておいて、具体的に挙げるとこうなります。

(1)生涯現役翻訳者であること。
(2)音楽作品(作詞・作曲・ギター演奏)を残すこと。

経済活動は前者だけですが、両者とも自己実現活動です。

(1)は特許翻訳に限定していません。現実には他ジャンルに挑戦するかもしれません。でも、それは特許の世界が翻訳不要となったときですね。

(2)は、音符も言葉も同じ記号であるという思いから、(1)と相互補完の関係にある活動だと思っています。


福光から伊藤さんへの返信メール(その2)


「言語と文化の知識以外の調べるスキル」とは、一体何でしょうか??

すみません、この表現が曖昧でしたので、まず訂正させてください。

ある程度「言語と文化の知識」を頭にたくわえることも必要ですが、「知らない言語と文化の知識を調べるスキル」もさらに必要なのです。

この調査スキルは、具体的には下記3つの能力をふくみます。

  • 知っている人に教わる
  • 図書館で調べる
  • ネットで調べる(PC/携帯)

最近は、ネットだけでほとんど済んでしまいますけどね。


また、そのスキルを得るにはどのような方法がありますか?

何でもわからないことに出くわしたら、

  • メモる(紙やICレコーダーなどに)
  • 調べる

ただひたすらこの習慣を身につけることかと思います。

最大の敵は「めんどくさい」と思う自分の心!


確かに、締め切りさえ守れば何時に何処でしても平気ですものね。翻訳にジャンルがある事すら知りませんでした(笑) というか、メディアやエンターテイメントの分野しか頭にありませんでした(; ̄× ̄)


拙著『翻訳者はウソをつく!』の22ページから37ページに翻訳の種類についてまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひいちどご覧になってくださいね。


私も中学生の時にビートルズが歌いたかったのですが、口がついていかない事が多々(^^;) 今は、多少歌える曲が増えました♪

おー、よかったですね! ”Hello Goodbye” がいちばん歌いやすいですよ♪


>でも、それは特許の世界が翻訳不要となったときですね。

翻訳不要となる時。。世界中の大多数の人が英語を第二言語として常用しているか、スペシャルな翻訳機能システムが開発され実用化され、世の中に浸透している時でしょうか。

前者はあまり進展しないでしょう。

後者の機械翻訳は目ざましく発展しているので可能性大です。

第3の可能性。特許の外国出願は、その国の言語に翻訳してから行うのですが、本国で認められた特許が外国でも通用するような方向へ流れています。外国出願が簡略化・統一化されると、翻訳も不要になる時代がくるかもしれないのです。(この風潮はハーモニゼーション〔協調〕といわれています)


まとめ

ご質問メールをくださった伊藤さんに感謝申しあげます。

このように問いかけをしていただくと、ふだん自分が何気なくやっている仕事を客観視でき、気持ちを新たにすることができますね。


翻訳も音楽も自己実現活動


こんなこと、ふだんは思っちゃいませんけどね(^^;)。
ただひたすら目の前にあるからやる!って感じです。