翻訳支援システム「言語グリッドツールボックス」試用レポ

昨日、京都で、会話と文書の他言語翻訳支援システムが発表されました。その名も「言語グリッドツールボックス(Language Grid Toolbox)」! かっこいい名前ですね♪



今朝のNHKニュースでも運用例が紹介されていました。「回転ずしを食べに行きたい」というような日本語文が、瞬時に精度の高いフランス語に翻訳されていましたよ。

数十種類の翻訳ソフトや辞書が組み込まれているとのこと。現在の機械翻訳テクノロジーが、最大公約数的に性能発揮してくれるのでしょうか?


本格的なサービス提供は「非営利目的での利用」に限られるそうです。ということは、翻訳者のボクは使えません(笑)。だけど、だれでも「お試し」利用が可能。ただし、アカウントとデータは1ヶ月ごとに削除されます。

そこで、翻訳エンジンの性能をチェックするために、さっそく登録してみました!



言語グリッドツールボックスには、いくつかのツールが用意されています。とりあえず中核となる「テキスト翻訳」でお味見してみよう!


テキスト翻訳


「テキスト翻訳」の特徴は、この3点。

  • 文ごとに翻訳結果が順次(インクリメンタル)表示される
  • 折り返し翻訳(逆翻訳)が同時表示され、チェックしやすい
  • 原文・翻訳文・折り返し翻訳間の文対応がハイライト表示されて一目瞭然


まぁ、普通っちゃぁフツーなのですが、見やすい逆翻訳が好印象でした。

ソース言語とターゲット言語との対応関係は次のとおりです。


中国語 英語・日本語・韓国語
クロアチア語 フランス語
英語 中国語・日本語・韓国語
フランス語 クロアチア語
ドイツ語 日本語
日本語 中国語・英語・ドイツ語・韓国語
韓国語 中国語・英語・日本語


これらはデフォルトであり、「設定」画面から、その他数十言語を登録することもできます。上記の組み合わせが需要あるということなのでしょうね。「クロアチア語←→フランス語」の対応が新鮮でした!


では、実際にツールを使って日英と英日の翻訳を試してみます。


日英翻訳その1


【原文】今日から新しく翻訳ブログを始めました。

【翻訳文】A translation blog has been begun newly from today.

【逆翻訳文】翻訳ブログは今日から最近はじめられている。


日英翻訳その2 (ツイッターでのつぶやき@junfukumitsu


【原文】なぜ強者は弱者の前でわがままが言えるのか。 。 。 自分はそうでないと言いきれるのか。 。 。 なんたる社会の仕組み。 。 。 (と、オカメインコたちに話しかけている)

【翻訳文】Why can a soldier call selfishness in front of the weak? . . One, so, or, can I declare? . . What’s social mechanism. . . (And, I’m speaking to OKAMEINKO.)

【逆翻訳文】なぜ兵士は弱いものの前でわがままを呼ぶことができるか? . . もの、または、私が宣言する缶? . . 社会的なメカニズムであるもの。 . . (そして、私はOKAMEINKOと話している。)


英日翻訳その1


【原文】I have just started a new blog about translation.

【翻訳文】私は翻訳について新しいブログを始めたばかりであった。

【逆翻訳文】I had just begun a new blog about translation.


英日翻訳その2 (ツイッターのつぶやき@jfworld


【原文】How could strong people be so selfish in front of weak people? And why are you so sure you are not? What a mechanism of society! I’m talking to my pet cockatiels.

【翻訳文】どうして強い人々は弱い人々の前でそんなに利己的であることができるか? そして、なぜそうではないとそんなに確信しているか? 社会のなんというメカニズムなのか! 私は私のペットオカメインコに話している。

【逆翻訳文】Can the people strong why be so selfish in front of the weak people? And are you so convinced that I’m unlikely to stroke? What social mechanism is it! I’m speaking to my PETTOOKAMEINKO.


最後の和訳のみ正解! よくできました(笑)。

どこがどう違うとか言いはじめたらキリがなくなるので、一点だけ。

現在完了の「have just started」を「始めたばかりであった」は、明らかな文法上の誤変換ですね。その証拠に逆翻訳では過去完了の「had just begun」となってしまっています。

間違った翻訳についてフィードバックを集めるシステムがあれば、精度の向上が見込めるのではないでしょうか? 残念ながらそのような目的の送信リンクはありません。


Web作成


もうひとつ即戦力になりそうなツール「Web作成」では、URL入力することで自動翻訳されたHTMLが生成されます。

こちらも健闘していますが、日英に関しては、実用度は低いかもしれません。相手に伝わらない、もしくは、誤解のせいで反感を買ってしまいそうな英訳文が吐き出されてしまいます。

いくつものサイトで日英について試してみましたが、少なくとも現時点で自分のサイトには使いたくない、というのが正直な感想です。


ちなみに「Web作成」のソース言語とターゲット言語のデフォルト対応は、こうなっています。


中国語 日本語・英語
英語 中国語・日本語・韓国語
日本語 中国語・英語・韓国語
韓国語 英語・日本語


多言語掲示板


「多言語掲示板」をのぞいてみると、サポートフォーラムのようです。

ここに書き込まれたメッセージも機械翻訳されるのですが、とても読みにくいので、BBSの機能自体がそこなわれています。このBBSを実験台にする試みは意欲的なのですが、あぶはち取らずの様相を呈しています。

サイトのツール説明に「翻訳された言語をよく知っているユーザが、他のユーザのために翻訳されたメッセージを修正することができます」とあるのですが、発言者の意図を確認せずに修正は不可能です。


まとめ


機械翻訳の出力精度は、翻訳してもらうことを意識した原文であるかどうかで決まってしまいます。現に、上記の「英日翻訳その2」では、原文の略語を正式スペルに戻してから翻訳にかけました。そうでないと、正解じゃなかったのです。

しかし、このような前処理を一般ユーザーに求めるのは、余計な神経を使わせることになり、いつまでたっても実用レベルになりません。そのためにも、原文を発した人に翻訳文の評価をフィードバックしてもらい、もっと緻密なアルゴリズムを開発してほしいものです。


言語グリッドツールボックスのツール群はすばらしい潜在能力を持っているのでしょうが、効率的な設定や組み合わせなど、現場のエンドユーザー向けの利用マニュアルや導入例も公開していく必要があると思います。ツールのお試しだけでは、かえって「使いにくい」という印象を与えてしまいそうです。

自分が職業翻訳者だからといって、機械翻訳を目の敵にしているわけではありません。どんな未知の異星人とも意思疎通が可能になる万能翻訳機が遅かれ早かれ登場すると信じています。スタートレックファンなので(笑)。

本記事が開発者の方々の目にとまり、さらなる技術向上の一助になればと思います。


でも、本心はアセっていたりして(^^;)


ボクが失業したら、機械翻訳をうらみます(笑)


以上、「言語グリッドツールボックス」のお試しレポートでした♪